商品のご紹介
喜楽長 時渡る 
商品写真: 1800ml
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【2020年10月より発売開始】
良き酒とともに、静かに向き合う。過去と未来が時を渡り、めぐりくる。
使用米:滋賀渡船6号
酵母:14号系酵母
 
<QRコードからお越しの皆様へ。>
「時渡る」の誕生について、少し長くお話ししております。
どうぞ「時渡る」をのみながら、ゆっくりと、米造り・酒造りに想いを巡らせていただければ幸いです。

―はじまりは、一握りの種籾から
 滋賀渡船6号は、昭和34年まで栽培されていた幻の酒米でありました。明治28年に開設された滋賀県農事試験場にて、福岡産の渡船から開発育成され、生まれました。
開発後、県の奨励品種として湖南地方を中心に栽培されていましたが、栽培が非常に難しく、昭和34年以降は生産されず、途絶えてしまいました。
しかしながら、半世紀以上の時を超え、平成16年、滋賀渡船6号が復活したのです。始まりの種籾はわずか一握り(50g)。
小さな始まりから、徐々に生産量を増やし、今では滋賀県を代表する酒米へと再び成長しました。喜多酒造は復活初年度から滋賀渡船6号で酒造りを行っています。
 滋賀県独自の酒米である滋賀渡船6号。酒米の王様とも呼ばれる山田錦の父系にあたり、原生種としての力強さを持ちます。
稲穂の背が高いと言われる酒米の王様・山田錦よりも、背が高い。しかしながら、その高さゆえ、倒伏しやすく、栽培が難しい。滋賀渡船6号の栽培には、高い技術が必要とされます。
滋賀渡船6号の田んぼは、とても印象的です。風に揺れる滋賀渡船6号の稲穂は、原生種ならではの深い生命力を感じさせます。
 
―新たな気づき、滋賀渡船6号のポテンシャル
 滋賀渡船6号で醸した新たな「時渡る」。
平成16年より、滋賀渡船6号で醸してきた喜多酒造にとって、新たな「時渡る」は、一から設計を見直しました。
滋賀渡船6号は、原生種ならではの味わいの深さが特徴的な酒米でありましたが、その反面、野性味あふれるワイルドな味わいになりやすい。キレイな味わいをと米を溶かさないようにすれば固く、味わいにふくらみをと米を溶かすと、味わいのバランスがとりにくい。造り手としては、難しさと面白さが共存する酒米なのです。
 「時渡る」を製造設計する最初の一歩は、喜楽長の目指すたおやかさと滋賀渡船6号の特徴を改めて見つめる、そんなところから始まりました。今までの製造を見直し、その中で感じたのは、滋賀渡船6号のポテンシャル、つまりは私たちのおもう本当の滋賀渡船6号の良さ、は、野性味あふれる滋賀渡船6号としてのそのままのイメージだけではなく、その奥に隠された深い旨味・原生種ならではの奥行ではないか、そのように気づきました。
 そのような深い味わいは、喜楽長の目指す「たおやかさ」と通ずるところがある、滋賀渡船6号においても喜楽長ならではの味わいを醸すことができる。この気づきは大きく、今までの設計を大きく変える転機となりました。滋賀渡船6号の新たなポテンシャルを生かす造り、を課題とし設計が始まりました。
 
―見つめ信じること、14号系酵母での挑戦
 米の味わい、深い旨味を醸すために、精米歩合は削りすぎない65%。そして、何より酵母は、喜楽長の最も得意とする14号系酵母としました。14号系酵母は、美しい香り、そして酸のおだやかさから、長年喜多酒造の大半はこの酵母で醸しています。14号酵母は吟醸酵母とされ、山田錦などといったバランス型の酒米に用いてきました。今回、特徴的な個性をもつ滋賀渡船6号に、この14号系酵母がどう影響するのか、今までの設計では想像のつかない部分ではありました。しかしながら、滋賀渡船6号を見直すこと、今まで気づかなかった滋賀渡船6号のポテンシャルを信じ、そして喜楽長の目指す「たおやか」な味わいを求め、静かで深い味わいとなるように滋賀渡船6号×14号系酵母にて醸しました。
 滋賀渡船6号の深い味わい、米感を残しつつ、ワイルドにならないように、低温でゆっくりと醸し、そして、低温にて半年貯蔵することでより一層の味わいの奥行きを生み出しました。低温貯蔵により、より一層の奥行・深みを造りだすことができました。
 
時を渡って、今ここに生まれる「喜楽長 時渡る」。
復活米としての想い、そして喜多酒造が信じた新たな滋賀渡船6号への想いとともにお楽しみください。